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1990年代以降、地球温暖化や資源枯渇、廃棄物問題などの環境問題が社会的に大きな関心を集める中で、大学にも環境配慮型の運営が求められるようになりました。
特に千葉大学は、理工系・医学系など多様な教育研究活動を行う総合大学として、エネルギー消費量や化学物質管理、廃棄物処理など、環境負荷の大きさが課題として認識されていました。
1996年に環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001が発行されると、1998年に武蔵工業大学(当時)が国内の大学で初めて取得すると、法政大学や信州大学なども取得していきました。そうしたことを契機に、大学においてもISO14001を導入・運用できることが示され、大学が環境マネジメントを組織的に進める可能性が現実的なものとして認識されるようになりました。
千葉大学でも、研究活動や大規模キャンパス運営に伴う環境負荷を体系的に管理する必要性が認識され始め、大学全体を対象とした環境マネジメントシステム(EMS)導入の検討を開始しました。
「環境シンポジウム@千葉大学~100人の村から環境を考える~」は、2002年3月30日に千葉大学西千葉キャンパス・けやき会館大ホールで開催しました。
基調講演では、翻訳家の池田香代子氏が「世界がもし100人の村だったら」をテーマに講演を行い、地球規模の課題を身近に捉える視点を共有しました。
続いて、学生実行委員会による「千葉大がもし100人の村だったら」というプレゼンテーションや環境チャリティー企画が紹介されました。
後半のパネルディスカッション「大学から環境を変える」では、ISO14001を取得した大学の学生、大学関係者、環境NGO関係者などが登壇し、大学における環境活動の可能性や役割について活発な議論が行われました。
本シンポジウムは、大学を起点とした環境行動の重要性を多様な立場から考える機会となりました。
シンポジウムでの議論を契機として、千葉大学では学内にワーキンググループを設置し、環境マネジメントシステム導入の可能性について検討を開始しました。その中で、単なる環境管理にとどまらず、教育・人材育成と結びつけたEMSのあり方が議論されました。
さらに、2004年4月から国立大学の独立行政法人化が決定したこともあり、急速にISO14001の認証取得の機運が学内で高まりました。
磯野可一学長(当時)の強い意向もあり、千葉大学のEMSは、学生が「参加」する存在ではなく、運用の主体として「参画」する仕組みとすることが重要であるとの認識が共有されました。環境マネジメントを実践の場とした教育と位置づけ、学生が責任を持って運営に関わる体制を構築する方針が明確化されました。
倉阪秀史研究室の学生が主体となり学生に呼びかけ、2003年10月10日に環境ISO学生委員会が発足しました。発足メンバーは40名程度でした。
わたしたち人類は、産業革命以来、大量の資源エネルギーを用いて、その活動を発展させてきました。その結果、地球の温暖化、化学物質による汚染、生物多様性の減少など、さまざまな環境問題に直面するようになってきました。まさに、人間活動からの環境への負荷によって人類の存続の基盤となる環境がおびやかされつつある状況といえます。新しいミレニアムの初頭にあたって、これからの千年にわたって、今の文明を持続させるために何をすべきかについて、真剣に考え、英知を結集させるべきであると考えます。
千葉大学は、理系分野と文系分野の双方の幅広い分野をカバーする総合的な教育・研究機関として、この英知の形成と集積と実践に寄与していく責務があります。この責務を自覚しつつ、環境に関する教育や研究開発活動を推進し、学生の主体的な参画と地域社会との連携のもとに、環境負荷の少ない、緑豊かで安全なキャンパスづくりを進めていくことが必要です
このため、千葉大学では、環境マネジメントシステムの国際規格である I SO14001 の認証取得に向けたとりくみを開始します。
千葉大学が、環境 I SO の認証取得を受ける意義としては、つぎの4つを挙げることができます。
第一に、事業者としての社会的責任を果たすことです。千葉大学は、教職員数約2500 人、学生数約 14000 人を抱える大規模事業所です。その事業の過程で、電気、ガス、水などの資源エネルギーを消費し、廃棄物をはじめとする不要物を排出しています。また、実験系の学部を抱え、有害な化学物質も取り扱われています。これらを適正に管理し、ムダな消費・排出を抑制することは、事業者に課せられた社会的な責任といえます。
第二に、公的教育機関として率先して実行することです。千葉大学は、公的な機関として、率先して環境管理に取り組む必要があります。また、教育に携わる機関として、環境管理を実践すること自身が重要な教育の場ともなります。
第三に、環境管理システムを導入することにより、千葉大学の先進性を社会的に訴えることです。これまで、千葉大学は、飛び級の実施をはじめさまざまな先進的な取り組みを実行してきましたが、実験系を含む総合的な国立大学において、学生が主体的役割を果たしつつ環境 I SO を取得するという過去に類をみない取り組みに積極的にチャレンジします。
第四に、光熱水費、廃棄物処理費の削減を通じて、経費の有効利用を図ることです。千葉大学では、光熱水費のみで、年間約 12 億円の経費をかけており、教育・研究経費を圧迫しております。環境 I SO の取得によって、ムダな経費を節減し、有効活用を図ることといたします。
千葉大学における環境 I SO の取得に当たっては、以下の 4 点をとくに推し進めることにより、千葉大学らしい環境マネジメントシステムを構築していきます。
第一に、総合大学としての特長を活かした環境教育・研究です。文系と理系の知恵を集積し、また、附属幼稚園、附属小中学校と連携しつつ、環境教育と研究の実践を進めていきます。
第二に、環境負荷の少ない緑豊かで安全なキャンパスづくりです。省エネルギー・省資源、資淵の循環利用、グリーン購入を推進し、化学物質の安全管理を徹底することを通じて、環境負荷の少ないキャンパスを実現します。また、構内などの緑化を進め、緑を保全することにより、緑豊かなキャンパスとします。
第三に、学生主体の環境マネジメントシステムの構築と運用です。環境マネジメントシステムの構築と運用は、環境教育学習の格好の機会です。このため、千葉大学では、I SO 学生委員会を立ち上げ、環境目標項目の設定、研修システム、監査システムなどの構築について、学生委員会に原案作成を委ねるとともに、その運用についても学生の主体的な参加によって実施することとします。また、学生による自主的な環境活動を推奨し、多様な環境プログラムが実施されるキャンパスを目指します。
第四に、地域社会に開かれた形で環境マネジメントシステムを実施します。千葉大学では、従来から、地域社会に開かれたキャンパスづくりを進めてきましたが、その一環として、環境マネジメントシステムを地域社会に開かれた形で実施していくこととします。このため、I SOの認証取得に際して、I SO 公開セミナーを開催し、地域の人々にも情報発信を行いつつ作業を進めるとともに、キャンパスの I SO委員会に地域の人を委員として参加していただき、地域の意見も反映させながら、環境マネジメントを行うことを検討します。
将来的には全学にとりくみを広げることを視野にいれて、まず、西千葉キャンパスにおいて、平成 16 年度中に I SO14001 を取得するべく、作業を開始することとします。教職員の方々におかれては、すべての方が本件に関心をもって取り組むことを期待します。また、学生諸君においては、主体的に環境マネジメントシステムの構築作業に参加することを期待します。さらに、附属幼稚園・小学校・中学校、生協をはじめとする関係の施設・事業者におかれては、環境 I SO取得の趣旨をご理解いただき、この作業にご協力いただくようお願いいたします。そして、すべての関係の方々が協働してよりよいシステムを作り上げることを期待いたします。
2003 年10月27日
千葉大学学長 磯野可一
2003年10月27日に行われた
「環境ISOキックオフ宣言」で発表する学生
有志の40名の学生で発足した
2004年度に環境マネジメントシステムの運用を開始しました。4月にはじめての環境ISO基礎研修を実施し、9月に内部監査を実施しました。
2005年1月に、西千葉キャンパスを範囲として、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001を取得しました。
2005年12月には、松戸・柏の葉キャンパスに適用範囲を拡大しました。
2007年1月に、亥鼻キャンパスに適用範囲を拡大し、主要4キャンパスでISO14001取得となりました。
2013年に「東京大学工学部と千葉大学の連携による、教育機関におけるISO50001を用いたエネルギーマネジメントシステム導入モデル事業」が、経済産業省の『事業競争力強化モデル事業』に選定されたことに伴い、2013年12月に、エネルギーマネジメントシステムの国際規格であるISO50001を取得しました。
これは、ISO50001を取得大学として全国初の事例となりました。取得に必要な審査費用は全額経産省の補助金で賄い、当初は、次年度以降はISO50001部分については自己宣言形式で進める予定でした。
しかし、2014年度、文部科学省の国立大学法人評価委員会が発表した「国立大学法人等の平成25年度評価結果」において、「特筆される取組」として、千葉大学のISO50001取得の取り組みが「教職員、学生が一体となって環境・エネルギーマネジメントに取り組み環境・エネルギーマネジメントシステムの導入・推進を行った結果、大学として全国初となるエネルギーマネジメントシステム(ISO50001)の認証登録を取得している」として評価されたこともあり、1度目(2016年)は更新しました。
ISO50001の二度目の更新年に、更新の有無を検討した結果、以下の理由から自己宣言化することになりました。
① エネルギーマネジメントが定着した
ISO14001については外部審査で指摘を受けることもあり、大学の環境管理の改善に役に立っているが、ISO50001に関しては審査においては特に指摘もなく運用できている。
② ISO50001を審査できる審査機関が少ない
ISO14001との複合審査ができる審査機関が限られてしまう。
③ 実質的にはエネルギーマネジメントは継続できる
ISO14001にもエネルギーへの対応も含まれているので、マネジメントは継続できる。
④ 審査費用が削減できる
2021年4月に開設された墨田サテライトキャンパスに、ISO14001の適用範囲を拡大しました。
創成期 ~環境ISOの導入と学生主体の仕組みづくり
2003年度 環境ISOキックオフ宣言、環境ISO学生委員会発足
2004年度 国立大学法人化、西千葉地区でEMS運用開始
一般教養科目「環境マネジメントシステム実習Ⅰ~Ⅲ」開講
西千葉地区でISO14001認証取得、環境報告書発行開始
展開期 ~全学へのEMSの広がり
2005年度 松戸・柏の葉地区でISO14001認証範囲拡大
2006年度 環境ISO学生委員会の発案でレジ袋有料化とレジぶー基金スタート
2007年度 亥鼻地区でISO14001認証範囲拡大(附属病院除く)
2009年度 環境ISO学生委員会がNPO法人格を取得
2013年度 全地区でISO50001(エネルギーマネジメントシステム)認証取得(2019年度に自己宣言化)
発展期 ~企業と学生の連携とサステナビリティへの深化
2015年度 三菱製紙紙販売株式会社と環境ISO学生委員会の協同プロジェクト開始(~2024年度)
2016年度 千葉市地球温暖化対策地域協議会「次世代分科会」に環境ISO学生委員会が参加
2017年度 「千葉大学×京葉銀行ecoプロジェクト」開始
環境ISO学生委員会主催の環境意識啓発イベント「Chiba Winter Fes」開始
2019年度 環境報告書をサステナビリティレポートに変更
2020年度 「2040年RE100達成」長期ビジョンを宣言
2021年度 墨田サテライトキャンパスにISO14001認証範囲拡大
共創期 ~企業との連携強化と教育への展開
2022年度 株式会社ZOZOと環境ISO学生委員会の協働プロジェクト開始
エプソン販売株式会社と環境ISO学生委員会の協同プロジェクト開始(~2024年度)
株式会社パソナグループと環境ISO学生委員会の協同プロジェクト開始(~2024年度)
2023年度 環境ISO学生委員会対象の持続可能性について学ぶアジア留学プログラム開始
2024年度 一般教養科目「環境マネジメントシステム実習プロフェッショナル」開講
全学副専攻プログラム「環境サステナビリティ実践学」設置
2025年度 株式会社ブレーンセンターと「サステナ×キャリア共育プロジェクト」開始